はじめに
前回は、タイガー薬局の物販についてご紹介しました。最後に「次回は地域活動について」と予告していましたが、今回は予定を変更して、薬局のSNS運用についてお話ししたいと思います。地域活動については、次回あらためてご紹介します。

タイガー薬局では、LINE、Instagram、Xなどを目的に応じて使い分けています。ただ、最初にお伝えしておきたいのは、今回ご紹介する方法が「薬局のSNS運用の正解」だとは思っていないということです。薬局の立地や患者さんの年齢層、SNSを使う目的によって、当然使い方は変わります。採用を目的にInstagramを活用している薬局もあれば、Xを患者さんへの情報発信に使っている薬局もあると思います。今回はあくまで、「私はこういう考え方で使い分けている」という一つの事例として、実際にやってみて感じたことや失敗も含めてお話しします。SNSを始めたいけれど、何をすればいいかわからない。Instagram、X、LINEのどれを使えばいいかわからない。そんな薬局経営者の方が、一つでも始めてみるきっかけになれば嬉しいです。
目次
1.LINE、Instagram、Xにはそれぞれ役割を持たせる
タイガー薬局では、開業準備の段階からXを始め、開業後にLINEとInstagramの運用を始めました。それぞれ何となく使い始めたわけではなく、初めからある程度役割を分けて考えていました。現在は大きく分けると、
LINEは「現在の利用者との接点」
Instagramは「地域の方との接点」
Xは「同業者との接点」
という位置づけです。そのため、同じ内容をすべての媒体に投稿しているわけではありません。「何を発信するか」だけではなく、「誰に届けたいのか」によって使う媒体を変えています。
2.LINEは「必要な時に薬局とつながれる場所」
LINEは、主に現在タイガー薬局を利用してくださっている患者さんとのやり取りに使っています。特に多いのが処方せんの事前送信です。あらかじめLINEで処方せんを送っていただければ、薬局側で準備を進めることができます。患者さんの待ち時間を短縮できますし、薬局側も事前に処方内容を確認できます。

また、日々のちょっとした相談や質問にもLINEを利用していただいています。タイガー薬局では、LINEを使った処方せん送信の利用割合は比較的高いようです。
一方で、薬局側からの一斉配信はできるだけ控えています。便利だからといって頻繁に通知が届けば、患者さんにとっては鬱陶しく感じるかもしれません。そこで、こちらからの発信は月1回程度にしています。その代わり、LINE上から野菜の注文ができたり、タイガー薬局で取り扱っているおすすめの商品を見られたりするようにしています。SNSというと「こちらから情報を発信するもの」というイメージがありますが、LINEに関しては少し違います。私にとってLINEは、積極的に情報を送り続ける媒体というよりも、患者さんが必要な時に薬局とつながれる場所です。
電話をするほどではないけれど、ちょっと聞いてみたい。処方せんを先に送っておきたい。野菜を注文したい。そんな時に気軽に薬局とつながれることが、患者さんとの接点を作る一つの方法になっていると思っています。
3.Instagramで伝えたいのは「処方せんがなくても来ていい」

Instagramは、LINEよりも広い範囲の方を意識しています。現在タイガー薬局を利用してくださっている方はもちろん、まだ利用したことのない地域の方にも見てもらいたいと思って発信しています。そこで一番伝えたいのは、
「処方せんがなくても、薬局に来ていいんですよ」
ということです。以前のコラムでもお話ししてきた通り、タイガー薬局は面薬局として開局しました。物販をしたり、野菜を販売したり、イベントを企画したりしているのも、地域の方との接点を増やしたいからです。Instagramもその延長線上にあります。薬局の日常や商品、イベント、スタッフの様子などを発信することで、「薬をもらう時だけ行く場所」という薬局のイメージを少しずつ変えていきたいと思っています。
一時期は、私がタイガーマスクをかぶって、ほぼ毎日Instagramのストーリーズを投稿していたこともあります。1カ月ほど続けましたが、正直かなり大変でした(笑)。しかし、薬局に来た方から、
「いつもInstagram見ていますよ」
「タイガーマスク、面白かったです」
と声をかけていただくことが増えました。さらに薬局の中だけではなく、普段付き合いのある知人からも「Instagram見てるよ」と声をかけられることがよくありました。投稿そのものが直接売上につながったという感覚はありませんが、思っていた以上に見てもらえていることを実感できました。SNSでは「いいね」の数やフォロワー数に目が行きがちですが、実際の生活の中で「見てるよ」と言われると、地域での認知につながっていることを実感します。
4.Instagramをやれば集客できる、わけではなかった
一方で、Instagramを運用していれば、すぐに集客につながるわけでもありません。イベントを企画してInstagramで告知しても、思ったほど人が集まらなかったことはあります。
フォロワー数の問題なのか、告知の仕方なのか、それとも面薬局というタイガー薬局の性質によるものなのか。正直、今でも明確な答えはわかりません。ただ、実際に運用して感じているのは、Instagramを単純な「集客のためのツール」と考えると少し違うのではないか、ということです。
一つ投稿したから何人来た。フォロワーが何人増えたから売上がいくら増えた。もちろん、そうした数字も大切です。しかし、タイガー薬局ではもう少し長い目で考えています。普段から薬局の雰囲気を知ってもらう。どんな人がいて、どんなことをしていて、何を大切にしている薬局なのかを知ってもらう。そして何か困った時に、「あの薬局に聞いてみようかな」と思い出してもらう。
Instagramには、そんな地域に対するブランディングの役割があるのではないかと思っています。
5.Xは「薬局経営者としての自分」を発信する場所
Xについては、Instagramとはかなり違った使い方をしています。主に薬局経営者や薬剤師など、同業者との交流を目的にしています。

「タイガー薬局ではこんなことを始めました」
と発信したり、逆に他の薬局の取り組みを見て、
「それはどうやっているんですか?」
と質問したりします。
薬局を経営していると、自分の薬局の中だけでは得られない情報がたくさんあります。他の経営者が何を考え、どんなことに挑戦しているのかを知ることができるXは、私にとって情報交換や交流の場になっています。
一方で、Xの運用では一度反省したこともあります。経営者同士の交流を意識するあまり、経営視点に偏った発信をしていた時期がありました。たとえば、在宅患者さんが減り、売上が落ちたという内容を投稿したことがあります。経営者同士であれば、「患者数が減って経営に影響があった」という文脈で読んでもらえるかもしれません。しかし、ある方から、「これを患者さんが見たら、どう感じるだろう」という指摘を受けました。確かにその通りでした。実際に患者さんから何か言われたわけではありません。それでも、私は薬局名を出していますし、自分の顔写真も掲載しています。自分では「同業者向けのアカウント」と考えていても、Xは誰でも見ることができるオープンな場所です。医療者や経営者にとっての「患者さんが減った」という言葉と、患者さんやそのご家族が受け取る「患者さんが減った」という言葉では、意味合いが違って見える可能性があります。
自分が誰に向けて書いたかだけではなく、誰が読む可能性があるのかも考える。
薬局名や自分の顔を出して発信している以上、これは忘れてはいけない視点だと感じました。SNSは気軽に発信できるからこそ、投稿する前に「患者さんや地域の方がこれを読んだらどう感じるだろう」と考えることも必要だと思っています。
6.もう一つの課題は「続けること」
発信する内容には配慮が必要です。一方で、何でも慎重に考えすぎてしまうと、今度は投稿そのものができなくなります。これは特にInstagramで感じています。
「せっかく投稿するなら、ちゃんとした内容にしなければ」
「写真も文章もきちんと整えなければ」
そう考えているうちに、投稿するハードルがどんどん高くなってしまいます。実際、現在のInstagramは、私自身が思っているほど投稿できていません。そのため今後は、内容への配慮はしつつも、もう少し日常的な発信も増やし、週に1回程度は何か投稿していきたいと思っています。また、これまでInstagramではあまり紹介してこなかった在宅医療についても、もう少し発信していきたいと思っています。タイガー薬局は、物販やイベントだけをしている薬局ではありません。在宅医療にも取り組んでいます。SNSを通じて、「在宅医療のことも相談できるんだ」「こんなことまでやっている薬局なんだ」と知ってもらうことも、地域の方との接点につながるのではないかと思っています。
大切なのは、「何を発信してもいい」という意味で気楽にするのではなく、「毎回完璧な投稿を作らなくてもいい」と考えることなのかもしれません。私自身、まだそのバランスを探しているところです。
7.SNS運用に正解はない
LINE、Instagram、X。ひとくくりに「SNS」と呼ばれることもありますが、実際に運用してみると、それぞれ役割はかなり違います。
私の場合は、
LINEでは、現在利用してくださっている方が必要な時に薬局とつながれるようにする。
Instagramでは、地域の方に薬局を知ってもらう。
Xでは、薬局経営者や薬剤師とつながる。
そんな使い分けをしています。
また、SNSとは少し違いますが、GoogleマップやGoogleビジネスプロフィールも、地域の方に薬局を見つけてもらうためには大切なツールだと考えています。
ただし、繰り返しになりますが、これが正解だとは思っていません。採用を目的にInstagramを運用している薬局もありますし、Xから地域の方との接点が生まれている薬局もあるでしょう。大切なのは、「SNSをやること」そのものではなく、誰とつながるために使うのかを最初に考えることだと思っています。
そして、これからSNSを始めようと思っている薬局経営者の方には、最初からLINEもInstagramもXも全部やろうとしなくていい、とお伝えしたいです。私自身、複数のアカウントを運用していますが、すべてを継続して動かすのは簡単ではありません。まずは、「誰に何を伝えたいのか」を考えて、それに合ったものを一つ始めてみる。発信してみて、反応を見ながら、自分の薬局なりの使い方を見つけていく。SNSも薬局経営と同じで、実際にやってみなければわからないことがたくさんあります。タイガー薬局も試行錯誤しながら、「処方せんがなくても気軽に来てもらえる薬局」「困った時に相談してもらえる薬局」であることを、これからも発信していきたいと思います。
次回こそ、タイガー薬局が取り組んでいる地域活動についてご紹介します。