タイガー薬局の面薬局開業録 TIGER PHARMACIST

はじめに

前回は、タイガー薬局の設備についてご紹介しました。今回は、タイガー薬局が最も力を入れている「在宅医療」についてお話しします。

私は開業前から在宅医療に携わっており、「地域で必要とされる薬局になるためには在宅医療が欠かせない」と考えていました。しかし、実際に開業してみると、想像していた以上に順調な部分もあれば、大きな壁にぶつかることもありました。

今回は、開業後の在宅医療の立ち上げから現在に至るまでの経験を振り返りながら、地方薬局における在宅医療の可能性についてお伝えしたいと思います。

 

1.地方薬局における在宅医療の重要性

タイガー薬局がある石川県内灘町のような地域では、高齢化が進み、通院が難しい患者さんも少なくありません。さらに面薬局として開業するため外来患者さんが定着するまでには時間がかかり、その間にも経営を続けていかなくてはなりません。そのため、地域に根差した薬局として持続的に活動していく上で、在宅医療への対応は必須だと考えていました。

地方薬局における在宅医療の重要性

開業当初は、前職から引き継いだ約10名の患者さんからスタートしました。また、以前から関係のあった医師の先生方にも支えていただき、一定数の紹介が見込める環境での船出となりました。もちろん不安はありましたが、一定数は保証されていることが開業に踏み切るための安心材料でした。

 

2.在宅医療を始めるために必要だった準備

在宅医療、とくに終末期の患者さんへの対応には、設備と届出の両方が欠かせません。タイガー薬局では開業時から、がん終末期患者さんへの対応を見据えて準備を進めました。

前回の記事でも紹介しましたが、具体的には、

  • クリーンベンチ
  • 輸液ポンプ3台
  • PCAポンプ2台

を導入しました。

在宅医療を始めるために必要だった準備

また、医療用麻薬を扱うためや機器を貸与するための以下の許可、届出を行いました。

  • 麻薬小売業者免許
  • 高度管理医療機器販売業・貸与業※1
  • 無菌製剤処理加算
  • 在宅中心静脈栄養法加算※2
  • 医療用麻薬持続注射療法加算※2

※1:ポンプレンタルを行う場合、販売業だけでなく貸与業も必要になります。

※2:医療保険は厚生局に届出ですが、介護保険は別に各都道府県や政令市等への届出が必要です。

これらの届出のタイミングについてはそれぞれ異なるため、スタートと同時に算定するためには数か月前からスケジュールについて確認していました。

 

3.順調な立ち上がりと成長の壁

開業後の在宅患者数は順調に増加しました。前職から引き継いだ患者さんに加え、以前から関係のあった医師の先生方からご紹介いただく機会にも恵まれ、3~4か月間にかけて患者数は着実に増えていきました。

在宅医療を始めるために必要だった準備

3月の開業時には13名だった在宅患者数は、4月26名、5月35名、6月43名と順調に増加しました。しかし、グラフからも分かるように、7月以降は患者数の増加がほぼ止まり、12月時点でも46名程度と、約半年間にわたり横ばいの状態が続きました。当時は「このまま患者数は増え続けるだろう」とどこかで考えていました。しかし実際には、開業直後の勢いだけでは成長を維持できないことを痛感する時期となりました。

振り返ると、停滞の要因は大きく2つあったと考えています。一つは、依頼元となる医療機関側の事情です。当時、主な依頼元だった医師が在宅患者の受け入れを減らしており、結果として新規依頼も減少しました。

もう一つは、自分自身の問題です。開業後は在宅医療だけでなく、物販や外来患者の獲得、広報活動など新しい取り組みにも力を入れていました。その結果、在宅医療に対する営業活動や情報発信が以前より少なくなっていたのです。今思えば、「患者さんは自然に増えていくものではない」という当たり前の事実を改めて実感した時期でした。

 

4. 多職種連携という新たな挑戦

成長の壁を経験したことで、私は営業活動の方向性を見直しました。それまでのように医師からの紹介を待つのではなく、ケアマネジャーや訪問看護師など、多職種との接点を増やすため、患者さんの報告や相談をきっかけに事業所へ足を運び、少しずつ顔を覚えてもらうようにしました。

さらに、

  • 在宅患者対応実績
  • 終末期患者への対応実績
  • 無菌調製対応
  • 認定資格
  • 24時間対応体制

などをまとめた在宅医療向けチラシも作成しました。特に効果を感じたのは、自著『在宅医療のいろは』をお渡ししたことです。タイガー薬局が対応している在宅医療は、PCAポンプや無菌調製が必要な終末期患者さんだけではありません。実際には、慢性疾患を抱えながら自宅で生活されている高齢者の方も多く担当しています。服薬管理が難しい患者さんに対しては、

  • お薬ボックス
  • お薬カレンダー
  • 服薬支援ロボット

などを活用しながら、その方の生活環境に合わせた管理方法を提案しています。

在宅医療を始めるために必要だった準備

例えば、「薬を飲んだかどうか分からなくなる」「家族が毎日確認できない」「認知機能の低下で飲み忘れが増えている」といった課題は患者さんごとに異なります。そのため、薬を届けるだけではなく、「どうすれば安全に服薬できるか」を考えることも薬剤師の重要な役割です。

その中で、訪問看護師やケアマネジャーとも情報共有を行い、服薬状況や残薬の確認方法について相談しながら支援を進めています。こうした日常的な服薬支援は派手ではありませんが、在宅医療を支える上で非常に重要な業務の一つです。終末期医療から慢性期の服薬支援まで幅広く対応できることも、タイガー薬局の強みだと考えています。

これらの活動を通して、薬局が在宅医療で何をできるのかを具体的に知っていただく機会となり、結果として看護師やケアマネジャーからの相談や依頼が増えていきました。そして、そのつながりが新たな在宅医の先生との出会いにもつながっていったのです。

 

5.今後の展望

現在は、さらにケアマネジャーとの連携強化を進めています。

その一環として、

  • 薬剤師の業務をどの程度理解しているか
  • 薬剤師に何を期待しているか

を把握するためのアンケート実施を検討しています。営業というと特別なことのように感じますが、結局は「相手を知り、自分を知ってもらうこと」の積み重ねだと思います。薬局ができることを発信し続け、地域の課題を聞き続ける。その接点を増やしていくことが、結果として地域医療への貢献につながると考えています。

次回は、タイガー薬局のもう一つの特徴でもある「物販」への取り組みについてご紹介したいと思います。

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