はじめに
前回は資金繰りについてお話ししました。今回はその続きとして、「タイガー薬局では実際にどんな設備を使っているのか」をご紹介します。
立派な設備を最初から完璧にそろえた、という話ではありません。むしろ逆で、限られた資金の中で「どうやって最低限そろえたか」という現実的な話になります。経営の知識もない状態でスタートし、その時々で悩みながら選んできた設備たちです。あくまで一例として読んでいただければと思います。
1.調剤棚・鑑査台
調剤棚は、新品で一式そろえる余裕がなく、どうしようかと悩んでいました。そんな中、閉局した薬局から使わなくなった調剤棚を譲っていただく機会があり、中古の調剤棚を無料で導入することができました。
そのまま使うのではなく、天板は調剤室の壁紙と合わせてコンセプトカラーであるネイビーに張り替えています。また、鑑査台については中日販売で購入し、天板を特注でネイビーに仕上げてもらいました。その後、棚の追加が必要になった際も中日販売でそろえています。
正直、「せっかくお金をかけずに設備をそろえられたのに、色を変えるためにお金を使うのは無駄では?」と感じられるかもしれません。実際、自分でも少し迷いはありました。ただ、薬剤師は業務時間のほとんどを調剤室で過ごします。その空間がコンセプトカラーで整っていることで、気持ちよく仕事ができるというのは思っていた以上に大きな価値でした。結果として、このネイビーの調剤室はとても気に入っています。個人的にはやってよかった投資だったと感じています。
2.投薬カウンター
本来はオーダーメイドで作りたいところでしたが、予算の関係でそこまで手が回りませんでした。そこで、ストアエキスプレスで既製品のカウンターを数万円で購入し、改装をお願いした大工さんに穴あけなどの加工をしてもらいました。完全オーダーではありませんが、業務上は問題なく使えています。「既製品でも工夫すれば十分使える」という実感を得た部分です。
3.レセコン・薬歴
レセコンと薬歴については、開業当初はコストを抑えることを優先し、レセコンは調剤レセコン「Pharmy(ファーミー)」(株式会社モイネットシステム)を1台のみ導入し、薬歴もレセコン付属の機能で運用をスタートしました。当時は完全に1人薬剤師で受付回数も多くなかったため、「とりあえずこれで回るだろう」という判断でした。
しかし実際に運用してみると、この体制は想像以上にストレスが大きいものでした。レセコンが1台しかないため、処方せん受付入力と薬歴記載を同時に行うことができず、どちらかを待たせる場面が頻繁に発生します。スタッフが増えてからは、その非効率さがより顕著になりました。さらに、薬歴についてもレセコン付属の機能では記載のしづらさを感じることが多く、日々の業務の中で小さなストレスが積み重なっていきました。
その後、IT導入補助金を活用してクラウド型電子薬歴「MEDIXS薬歴」(メドレー株式会社)を導入しています。これにより薬歴の入力は格段にスムーズになり、業務全体の流れも明らかに改善しました。コスト面でも、レセコンをもう1台追加するよりもMEDIXSを導入する方が安く済んだため、結果的にはベストな選択だったと感じています。
振り返ると、開業当初から導入したかった気持ちはありましたが、当時の資金状況や業務量を考えると難しかったのも事実です。ただ、スタッフが2人以上になるのであれば、レセコン2台体制もしくは薬歴システムの導入は必須だと実感しています。
4. 分包機
分包機については、開業当初に中古の全自動散薬分包機 Single-R93Ⅲ(株式会社湯山製作所)を導入しています。この機種はVマス式ではなく円盤式の分包機で、多くの散剤をまとめて分包することができ、作業効率の面でも優れていると感じています。また、分包のばらつきも少なく、均等性の面でも安心して使える点がメリットです。もちろん錠剤の分包もできるので、初めはこれだけで運用していました。
その後、助成金を活用して小型錠剤分包機 MINDOSE-8 (株式会社湯山製作所)を導入しました。ユニバーサルカセットが8個付いているタイプで、面薬局のように一包化する薬剤が固定されにくい環境でも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
さらに、PTP除包機としてパラスター電動タイプ(株式会社トーショー)も組み合わせています。この 「MINDOSE-8+パラスター」 という組み合わせが個人的にはかなり気に入っています。
もともと一包化業務自体は好きな仕事でしたが、手巻きで対応していた頃はどうしても手間や時間がかかり、ストレスを感じる場面もありました。この環境になってからは作業がスムーズになり、余計な負担を感じることなく一包化に向き合えるようになったと感じています。また、MINDOSE-8は効率化だけでなく、レセコン連携や薬剤のバーコード読み取りによる過誤防止の点でも有効で、安心して運用できる点も大きなメリットです。
正直に言うと、どちらの機器も面薬局としてスタートする段階では贅沢品だったと思います。ただ、助成金をうまく活用して導入できたことは本当に良かったと感じています。
5.在宅関連設備
在宅医療を行う上で必要になる設備として、クリーンベンチとポンプ類についてまとめてご紹介します。
クリーンベンチは湯山製作所の卓上型(クリーンベンチB-A711)を導入しています。高カロリー輸液の混合にはやや狭さを感じる場面もありますが、スペースとコストのバランスを考えると現時点では十分対応できています。
ポンプ類については、輸液ポンプとしてカフティポンプS(エア・ウォーター株式会社)とPCAポンプとしてクーデックエイミーPCA (大研医器株式会社)をそれぞれ導入し、いずれも2台ずつ保有しています。1台を患者さんに貸し出している際にトラブルが起きた場合、すぐに代替できるバックアップ機が必要になるため、この台数が最低限だと考えています。
導入費用は合計で100万円以上と大きな出費でしたが、ここについてはほとんど迷いはありませんでした。在宅医療を本気でやると決めていた以上、ポンプ類は絶対に必要な設備だと最初から考えていたためです。現在は貸し出しで稼働していることも多く、しっかり現場で役に立っています。
6.まとめ
こうして振り返ると、統一された理想的な設備構成というよりは、その時々の状況の中で「これならできる」と思える選択を積み重ねてきた結果だと感じています。もらえるものはもらい、必要なところには投資し、足りない部分は工夫で補う。そんな形でなんとかここまでやってきました。最初から完璧を目指すのではなく、最低限でスタートし、必要に応じて少しずつ整えていく。その方が資金的にも無理がなく、現実的だと感じています。
一方で、補助金や助成金をうまく活用すれば、設備投資の負担を大きく軽減することも可能です。ただし、「補助されるから買う」のではなく、「必要だから買う」という軸は大切にしたいところです。
そして、雇われのときとの大きな違いとして感じているのは、設備に対する“愛着”です。自分で悩みながら選び、資金繰りに苦労し、助成金の申請も自分で行ってようやく手に入れた設備たちは、単なる道具ではなく、ひとつひとつに思い入れがあります。こだわって選んだ設備で日々の業務を回していく。その感覚は、雇われのときにはなかったものだと感じています。
ただし、これらはすべて、目指している医療を実現するためにそろえてきたものでもあります。タイガー薬局の核となっているのは、やはり在宅医療です。次回は、その在宅医療について、どのように立ち上げ、どのように取り組んできたのか、現場のリアルをお伝えできればと思います。