はじめに
前回は、こだわりの図面作成とレイアウト設計についてご紹介しました。第4回となる今回は、経営の血液とも言える「資金繰り」についてお話しします。
前提として、私は経営に関しては全くの素人からのスタートでした。私生活でも「どんぶり勘定」の極みで、家計は妻に任せっぱなし。そんな状態での薬局開業は、今思えば無謀な挑戦だったかもしれません。当然のごとく、開業後は幾度となく「資金ショート」の危機に直面しました。
今回は、私の冷や汗まみれの1年目の資金繰りの現実と、そんな苦境を救ってくれた「補助金・助成金」の活用実績についてご紹介します。
目次
1.資金繰りの現実と、やってきた資金ショートの危機
開業した3月以降、毎月末の口座残高は徐々に減っていきました。調剤報酬(保険負担分)の入金サイクルは「請求から2ヶ月後」です。つまり、3月分の売上が入金されるのは5月になります。
開業資金として、日本政策金融公庫と地元の信用金庫から協調融資で借り入れ、最初の1年間は元本返済を据え置きにしてもらいました。また、幸いなことに医薬品卸さんにご相談し、支払いサイトを2〜3ヶ月に延ばしていただくことができました。
そのため、「3月分の支払いは5〜6月になるから、保険収入が入った後だし資金がショートするはずはない」と完全にタカをくくっていたのです。
2.最大の要因は「人件費」への甘い見通し
原因は明確で、人件費でした。タイガー薬局の軸として在宅医療を中心に据える計画だったため、「薬剤師は2名体制が必要だ」と考え、4月からパート薬剤師1名、5月から事務員を雇用しました。
実際、4月は想定以上に在宅医療の依頼があり、「このペースで増えるなら、経験者の事務員がいないと業務が回らない」と判断しました。しかし、5月以降は在宅医療の伸びがピタッと止まってしまったのです。
開業前、先輩の薬局経営者さんたちからは「最初から人を雇うのはやめたほうがいい」とアドバイスをいただいていたのに、それを頑なに聞かずに雇用に踏み切ってしまいました。やはり、先人たちのアドバイスは素直に聞いておくべきだと痛感しました。
3.度重なる資金ショートと、胃が痛む月末
1期目(〜7月)は私自身の役員報酬を0円にして耐えていましたが、小学生の子どもたちも育ち盛りで家庭的にも限界がきており、2期目から報酬を発生させました。すると、当然ながら法人の資金は急激に目減りしていきます。
【第1の危機:9月】
レセコンの改修費用や、馬刺しの宣伝費用などの単発の支払いがあることを見落としていました。20日頃に通帳を見て「あれ? 今月支払いできないんじゃ…?」と青ざめました。あわてて妻に頭を下げて、大事な家庭の貯金を崩して法人に入金し、なんとかその月を凌ぎました。その後、信用金庫と日本政策金融公庫に相談し、追加で融資を受けることができました。
【第2の危機:翌年2月】
12月〜1月にかけて、1年間据え置きにしてもらっていた融資の元本返済がスタート。徐々に残高は減っていき、開業から約1年となる2026年2月に再び資金ショートの危機が訪れました。ここでも再度、役員借入金として個人の資金を法人に入れ、現在また信用金庫に運転資金の融資を相談しています。
3月からは「地域支援体制加算」の算定が開始でき、在宅患者様も増えつつあるため、売上的には「今後もやっていけるだろう」という手応えを感じる水準まで来ました。しかし、ここで油断して数ヶ月後にまた資金ショート…なんてことにならないよう、財布の紐は固く締めていきます。
4.苦しい資金繰りを支えた「補助金・助成金」
そんな綱渡りの資金繰りの中、大きな助け舟となったのが各種の補助金や助成金です。現在までの活用状況をまとめました。
| 状況 | 制度名 | 金額(目安) |
|---|---|---|
| 採択済 | 内灘町創業サポート補助金 | 50万円 |
| 採択済 | 業務改善助成金 | 170万円 |
| 採択済 | 業務改善奨励金(石川県) | 21.3万円 |
| 採択済 | 石川県賃上げ環境整備助成金 | 73.4万円 |
| 採択済 | IT導入補助金 | 79.5万円 |
| 審査中 | キャリアアップ助成金 | (100万円予定) |
| 申請予定 | 賃上げに向けた収益力強化補助金 (石川県) | (上限600万円) |
| 不採択 | 小規模事業者持続化補助金 (創業枠) | - |
すでに400万円近くの補助金・助成金が採択されています。それぞれの具体的な活用法をご紹介します。
1. 業務改善助成金 + 石川県奨励金の「併用コンボ」
雇用者の賃金引上げと業務効率化のための設備導入を行うことで、設備費用の4/5が助成される「業務改善助成金」を活用しました。
- 導入設備: 全自動散剤分包機(円盤1枚タイプ・中古品)、小型錠剤分包機
- 総額: 2,555,000円(税抜)/ 2,810,500円(税込)
- 業務改善助成金: 1,700,000円
- 石川県業務改善奨励金: 213,000円(※助成金の自己負担分の一部を助成)
これらを併用した結果、総額約280万円の設備に対し、助成の合計が1,913,000円となり、約90万円で2台の分包機を購入することができました! 今回は学生アルバイトの賃金を引き上げて申請しました。国と県の制度を併用することで実質的な補助率が9/10になり、薬局に必須の分包機をお得に導入できたのは非常に大きかったです。(ちなみに分包機は、最初は正規購入までのお試しとして借りていた中古品をそのまま購入しました)
2. 石川県賃上げ環境整備助成金(過去の経費も対象!)
こちらも賃上げ+業務改善の取り組みで4/5(最大100万円)が助成される石川県の事業です。この制度の激アツなポイントは、「過去に使用した経費も計上できる」という点でした。
経費合計: 918,000円 (税抜)
- 馬刺し販売の広告費:378,000円
- PTP除包機:310,000円
- 自動ペンライナー(分包機オプション):230,000円
助成金: 734,000円
この制度を知った時にはすでに広告費などは支払い済みで、完全に持ち出しのつもりでした。それが後から助成対象になると知り、「ほとんどタダでPTP除包機とペンライナーが手に入った!」と歓喜しました。
3. IT導入補助金
電子薬歴の導入に活用しました。他の制度はすべて自分で書類を作成して申請しましたが、IT導入補助金は薬歴システム会社と提携しているコンサル会社が書類作成をサポートしてくれたため、必要な書類を集めるだけでとても楽でした。 通常は補助率1/2ですが、賃上げを行っている場合は 2/3に引き上げられます。
- 導入設備:電子薬歴システム(導入費用 + 2年間システム利用料)
- 総額: 1,192,000円
- 補助金: 794,667円
4. キャリアアップ助成金(正社員化コース等)
雇用者を有期契約から無期契約(正社員)に切り替える際などに申請できる助成金です。(予定額:約100万円) ただし、これは手続きが非常に複雑です。キャリアアップ計画の策定・提出、就業規則への明記、契約変更と段階を踏む必要があり、全額受け取るまで最短でも1年半以上かかります。現在は1回目の申請を終えた段階ですが、設備導入に関わらずいただける制度なので、早く入金されないかと首を長くして待っています。
5.まとめ:制度はフル活用しつつ、無駄遣いには要注意!
ご紹介した通り、ほとんどの補助金・助成金制度が「賃上げ」と強く紐づいています。令和8年度の調剤報酬改定でベースアップ評価料が新設されましたが、賃上げを行うことで使える制度はたくさんあります。従業員にしっかり還元しつつ、こうした制度を賢く活用していくべきだと感じています。(※制度によって「基本給のみ」か「手当も含む」か条件が異なるので、申請時の確認は必須です)
ただし、「補助金が出るからといって、不必要なものまで買いすぎない」という自戒も込めてお伝えします。 今後、補助率3/4(上限600万円)という非常に条件の良い石川県の「賃上げに向けた収益力強化補助金」の申請を予定していますが、無駄な買い物をして自己負担分で自分の首を絞めないよう、本当に必要な投資かを見極めるつもりです。
新規開業において、分包機などの設備はどうしても必要になります。開業前から各種制度を調べて準備しておくことで、初期費用を大幅に抑えることができますよ。
次回は、今回少し触れた「分包機」をはじめとする設備について。資金がない中で試行錯誤した、具体的な設備の紹介と入手方法について解説します!お楽しみに。