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薬剤師に将来性はないって本当?今後薬剤師に求められるスキルも解説

薬剤師は調剤や服薬指導を担う専門職として、医療の現場で重要な役割を果たしています。しかしAI技術の進展や制度改正、薬価の見直しなど環境の変化により「将来仕事がなくなるのでは」と不安視する声もあります。

実際には、患者対応や臨床判断など人間にしかできない業務が多く残り、職域そのものが消滅することはありません。ただし、需要の変動や競争激化に備え、専門性やマネジメント力を磨くことが求められます。当記事では、薬剤師の将来性や今後必要とされるスキル、キャリアアップの方向性について詳しく解説します。

 

1. 薬剤師は将来的に仕事がなくなるって本当?

今後、薬剤師の仕事が完全になくなることはないでしょう。患者対応や医療安全の担い手としての薬剤師の役割は不可欠であり、今後も需要は続きます。ただし、時代の変化により、将来性を不安視する声があることも事実です。

ここでは、薬剤師の将来性について、なぜ「仕事がなくなる」と言われてしまうのか詳しく解説します。

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1-1. 薬剤師の需要は横ばい状態である

薬剤師の需要は現在横ばいに近い水準で推移していますが、日本の人口減少に伴い投薬対象者数は減少していく見込みです。すぐに供給過剰となるわけではありませんが、人口動態の変化により今後は薬剤師の需要がゆるやかに低下する可能性も考えられます。

一方で、高齢化の進行により医療需要は維持されるため、医療分野は医療従事者の需要と供給が課題です。薬剤師は現状の横ばい傾向を踏まえ、今後の需要変動に適応する準備が求められます。

 

1-2. AIによって一部の業務が代替されうる

AIの導入により薬剤師業務の一部の効率化が進められており、特に調剤や薬歴管理、在庫管理、相互作用のチェックといったデータ処理型の作業はAIで代替できると考えられています。

しかし、患者との対話やカウンセリング、臨床判断や倫理的配慮といった高度な判断力やコミュニケーションが必要な領域はAIでは対応できません。そのため、薬剤師の仕事が全面的に失われるわけではなく、AIは補助的な役割にとどまるでしょう。

ただしAI活用によって効率が上がり、薬剤師同士の競争が激しくなる可能性は否定できません。どのように専門性を磨いていくかが今後の薬剤師にとって課題となります。

 

1-3. 0402通知により非薬剤師のできる業務が拡大している

2019年4月2日に厚生労働省から発出された「0402通知」によって、薬剤師以外でも一部の補助業務が認められるようになりました。具体的には、ピッキングや一包化後の数量確認、調剤済み薬剤のカレンダーへの仕分けなどは非薬剤師でも実施可能とされています。これにより薬剤師は服薬指導や疑義照会など本来の専門業務に集中できるようになり、医療全体の質の向上が期待されています。

現状では薬剤師業務が大幅に減少する状況ではありませんが、将来的に制度がさらに拡大すれば、薬剤師の役割に変化が及ぶ可能性もあります。

出典:厚生労働省「調剤業務のあり方について」

 

1-4. 調剤報酬の改定や薬価のマイナス改定がされている

薬剤師の雇用環境には、調剤報酬や薬価改定が大きく影響しています。診療報酬は2年ごとに見直され、薬価は毎年改定されますが、2010年以降薬価部分は継続的にマイナス改定が行われてきました。薬価差益の縮小や資産の減少により、薬局が確保できる利益は減少傾向にあります。

その結果、薬局側は人件費を抑える必要に迫られ、雇用に余裕がなくなる可能性もあります。薬剤師にとっては待遇や就業先選びへの影響もあるので、経営状況や改定動向を踏まえたキャリア戦略が必要です。一方で、在宅医療や地域包括ケアなど新しい需要も広がっており、専門性を発揮できるでしょう。

 

2. 今後の薬剤師に求められるスキル

薬剤師を取り巻く環境は変化しており、従来の調剤中心の役割に加えて、幅広いスキルが求められるようになっています。今後のキャリアを考える上で、以下の4つの能力を身につけることが大切です。

  • より幅広い専門知識
    セルフメディケーションの普及や医療の高度化に伴い、薬剤師は薬学的知識に加え、生活習慣病や在宅医療、緩和ケアなど多様な領域を理解する力が求められます。認定薬剤師や専門薬剤師といった資格取得によって知識を証明すれば、専門職としての評価を高められます。
  • マネジメント力・マーケティング能力
    管理薬剤師や薬局長を目指す場合、収支管理やスタッフ育成に加えて、販売促進や顧客ニーズの把握といった経営的な視点が不可欠です。医療従事者としてのスキルだけでなく、経営資源を動かす力を備えましょう。
  • かかりつけ薬剤師としての役割遂行能力
    地域包括ケアや在宅医療の推進により、患者一人ひとりの生活背景を踏まえた服薬支援や残薬管理が求められています。夜間や休日対応を含め、地域住民に寄り添う姿勢が評価されるようになっているので、信頼を得るための継続的な関わりを持ちましょう。
  • 外国語のコミュニケーション能力
    外国人観光客や在住者の増加に伴い、英語をはじめとする外国語で服薬指導を行える薬剤師の需要は高まっています。多言語対応力を身につけることで、患者層の拡大や国際的な医療需要に対応できます。

変化の時代においては、学び続ける姿勢こそが薬剤師の将来性を支える基盤となるでしょう。

 

3. 次の時代の薬剤師としてキャリアアップするためにすべきこと

今後も必要とされる薬剤師となるためには、専門性を高めることやマネジメント能力を養うこと、さらには独立を視野に入れたキャリア形成が大切です。ここでは、そのための具体的な方法を解説します。

 

3-1. 認定薬剤師・専門薬剤師資格を取得する

薬剤師として長期的に活躍するには、専門性の高さを示す資格の取得が効果的です。日本病院薬剤師会の認定・専門薬剤師の資格が代表的で、がんや感染症、精神科など領域特化の専門薬剤師資格を取得すれば、専門医療機関や地域医療での需要が高まります。

認定・専門薬剤師の資格要件の中には一定の実務経験や研修履修を求める項目もあり、学び続ける姿勢が評価される点も大きな特徴です。資格取得は転職や昇進の際に有利に働くだけでなく、患者や医療チームから信頼される薬剤師としての地位を確立する助けにもなります。

 

3-2. 管理薬剤師を目指す

薬局の運営を担う管理薬剤師は、組織に欠かせない存在です。業務内容は薬剤管理にとどまらず、従業員の育成や労務管理、売上や在庫のコントロールなど多岐にわたります。こうしたマネジメント能力を磨くことは、薬剤師の中でも数少ない管理職のポジションを得るために不可欠です。

管理薬剤師の経験はキャリアアップにつながるだけでなく、転職市場でも高く評価されます。安定した雇用と高収入を実現できる可能性があるため、早い段階からマネジメントに関する知識を学び、経験を積むとよいでしょう。

 

3-3. 独立開業して経営者になる

さらなるキャリアの選択肢として、独立開業して薬局経営者になる道もあります。経営者となれば、自身の理念を反映した薬局運営が可能になり、地域住民に密着した医療サービスを展開できます。

一方で、経営には資金調達、立地選定、スタッフ管理、収益確保といった幅広い知識とスキルが必要です。薬価改定や調剤報酬の影響を受けやすい業界のため、経営安定にはリスク管理力も求められます。独立開業は難易度が高いものの、大きな成長と社会的貢献の機会を得られます。

 

まとめ

薬剤師の仕事は今後も医療現場に不可欠ですが、人口減少やAI活用、調剤報酬の改定といった外部要因により、従来通りの働き方だけでは安定した将来を描きにくくなっています。

認定薬剤師や専門薬剤師資格の取得、管理薬剤師としてのマネジメント力の習得、さらには独立開業など、キャリアを広げる手段はさまざまあります。変化する環境に適応し、専門性と経営的視点を併せ持つことが、今後の薬剤師に求められる姿勢です。 学び続ける意識を持てば、どのような時代においても信頼される薬剤師として活躍を続けられるでしょう。

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