薬局開業基礎知識と成功のポイント COLUMN

薬剤師の独立は難しい?失敗例や失敗を防ぐ方法を徹底解説

調剤薬局を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、特に中小規模の薬局が独立する難易度は上がっていると言われます。しかし、地域に根ざしたサービスや医師との連携を通じて信頼を築き、経営を軌道に乗せている薬局も存在します。独立を成功させるためには、経営のリスクとなる要因を事前に把握し、必要な準備を整えることが欠かせません。

この記事では、薬剤師の独立が難しいとされる背景や、よくある失敗例、失敗を防ぐためのポイントを解説します。薬局経営に挑戦したい方はぜひ参考にしてください。

 

1.薬剤師の独立が難しいと言われる理由

薬剤師が独立を考える際、「難しい」と感じる理由として挙げられるのは、市場環境の厳しさや経営の難易度の高さです。2024年1~7月には調剤薬局の倒産件数が過去最多となる22件に達しており、個人薬局にとっては冬の時代と言えます。背景には、大手薬局チェーンやドラッグストアの店舗拡大、さらにはコンビニや通販業界など異業種からの参入が活発化していることがあります。

出典:東京商工リサーチ「2024年1-7月「調剤薬局」倒産 過去最多22件 大手再編と新規参入で、中小の「調剤薬局」は冬の時代へ」

地域密着を売りとする中小の薬局は、急激なビジネスモデルの変化に対応しづらく、生き残りの難易度が上がっている状況です。

また、独立した薬剤師は店舗運営やスタッフの雇用管理に加えて、調剤報酬改定による収益変動への対応など、多岐にわたる経営課題を自力で解決しなければなりません。市場競争の激化に加えて、経営のセンスを求められるシーンが多いため、薬剤師の独立難易度は高まっています。

 

2.薬剤師の独立開業の失敗例

独立の難易度は高くなっているものの、工夫次第で薬局開業は不可能ではありません。市場調査や資金計画、競合との差別化戦略を十分に練り、将来的な経営リスクを適切に想定しておくことで、成功の可能性は十分にあります。

薬剤師が独立開業に成功するためには、失敗理由について知っておくのが大切です。以下は、代表的な独立開業の失敗例です。

 

2-1.特定の医療機関に極端に依存している

薬剤師が独立開業する場合、特定の医療機関に依存した経営はリスクが非常に高くなります。

現在、調剤薬局の約8割は、特定の病院やクリニックの処方箋を主な収入源としている門前薬局です。しかし、調剤報酬改定により処方箋集中率が高い門前薬局への評価は下がっています。

出典:厚生労働省「薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)」

さらに、電子処方箋が普及したことで、薬局の選び方をこれまでの「病院に近い」だけでなく、「自分の体調についてよく理解している」「サービスが良い」などの視点からも選ぶ患者が増加している傾向もあります。

地域住民への健康相談などの新たなサービスを展開していない場合、今依存している医療機関が移転や閉院をしたときに、経営難に陥る薬局も多いでしょう。

 

2-2.大手薬局やドラッグストアとの差別化ができていない

大手調剤薬局やドラッグストアは調剤待ちの時間を買い物に利用できる利便性を提供し、豊富な商品ラインナップと競争力のある価格で集客しています。単に日用品やOTC医薬品を扱うだけでは、中小薬局が競争するのは困難です。

個人薬局が差別化を図るためには、薬剤師の専門性を生かした丁寧な服薬指導や地域密着型サービスを強化することが求められます。特に、患者が求める安心感や信頼性を向上させる取り組みが重要です。

 

2-3.事前の計画が不十分だった

薬剤師の独立を成功させるには、綿密な事前計画が欠かせません。資金調達や立地、在庫管理、スタッフ採用など、さまざまな準備が求められます。

例えば、立地条件についての計画が不十分なケースを考えてみましょう。病院に近いというだけで開業場所を決めたものの、病院から出てくる患者が移動する導線上から外れており、調剤薬局に気づいてもらえないと、想定したような売り上げが得られません。また、近隣に大規模なドラッグストアがあり、厳しい競争にさらされるケースもあります。

地域の市場調査やニーズ分析を十分に行わず、楽観的な予測だけで開業すると経営が難しくなります。将来的なビジョンをしっかり持ち、目標を定めて計画を進めるのが大切です。

 

2-4.資金や税金に関する知識が足りていない

資金管理や税金の知識不足も、薬剤師が独立でつまずく原因の1つです。融資を受けて開業する場合、開業後の固定費や人件費、社会保険料なども考慮した上で無理のない返済計画を立てないと資金繰りが苦しくなります。

また、独立後は経営者として税金の仕組みを理解し、適切な財務管理を行うことが求められます。税金の負担が予想以上に重くなる場合もあるため、事前に経営セミナーに参加したり専門家のアドバイスを受けたりして知識をしっかりと身につけましょう。

 

3.薬剤師が独立に失敗しない方法

難易度が上がる中で、薬剤師が独立開業に成功するためには、同業他社との差別化戦略が欠かせません。

中小薬局が生き延び、独立に成功するための4つのポイントについて解説します。

 

3-1.エリアマーケティングを行う

調剤薬局は地域密着型の経営を基本としているため、エリアマーケティングが欠かせません。エリアマーケティングとは、薬局を構える地域において競合となる薬局やドラッグストア、住民層の特徴を調査・分析し、集客に活用する方法です。

エリアマーケティングにあたっては、まずは開業予定のエリア内を歩いて、ほかの薬局が提供するサービス内容を把握するのが大切です。エリア内での差別化できるポイントを見出し、住民が薬局に求めるニーズを調査すれば、差別化のポイントを探せます。

また、地域住民との良好な関係を築くために、町内会と協力するのもよいやり方です。例えば、町内会主催のイベントで健康相談会や服薬指導を行えば、薬局の存在を地域に周知できます。

 

3-2.かかりつけ薬局の推進

近年、厚生労働省は「かかりつけ薬局」の推進を掲げており、地域包括ケアシステムの一環として薬局が重要な役割を担っています。独立開業する薬剤師にとって、かかりつけ薬局を進めることは経営の安定化に直結するポイントです。

かかりつけ薬剤師になると、かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料などの加算を取得でき、薬局としての収入が向上します。

患者にとっても、服薬状況を一元管理できるほか、副作用の早期発見や飲み合わせチェック、服薬指導を受けられるため多くのメリットがあります。

 

3-3.医師や同業者とのコネクションを構築する

薬剤師が独立開業を成功させるには、地域医療を支える医師やほかの薬局経営者との協力体制が必要です。特に薬局の利益につながりやすい、ジェネリック医薬品の使用提案や処方箋発行時の連携などを行うには、医師との関係性が欠かせません。地域の病院・クリニックへの営業活動やあいさつ回りは必ず行いましょう。

また、地域包括支援センターや介護保険事業所といった福祉施設との連携も有効です。保健師やケアマネジャーと情報交換を行うことで、在宅医療や訪問服薬指導の機会を増やし、新規顧客の獲得にもつながります。

 

3-4.経営が軌道に乗るまでの資金計画を立てる

調剤報酬は請求から支払いまで2か月かかることが一般的なため、運転資金の余裕がないと資金繰りが苦しくなり、経営が早期に破綻する可能性があります。

調剤薬局を開業する場合、土地や建物取得、設備導入、広告宣伝費用などの初期投資として数千万円規模の開業資金が必要です。さらに、開業直後から利益が出ることはまれであるため、薬剤購入費、人件費、賃料や光熱費などの運転資金を開業後3か月分以上準備するのが一般的です。

一定額のまとまった資金が必要なため、資金調達や返済を含めた事業計画を、税理士や中小企業診断士といった専門家に相談しながら作るとよいでしょう。また、金融機関から借り入れる場合でも、自己資金として開業資金の20~30%程度が必要になるので、計画的に貯蓄することが求められます。

 

まとめ

薬剤師の独立にあたって、特定の医療機関への依存や、同業他社との差別化不足は、経営を不安定にする要因になり得ます。また、資金管理や税務への知識不足も倒産リスクを高めます。

一方で、事前に資金計画を立てた上で、エリアマーケティングの実施や、かかりつけ薬局としての機能強化、医師・福祉施設との連携構築などを行えば、安定経営を実現することは十分可能です。

事前のリサーチと計画を綿密に行い、地域に根ざした経営を行えば、独立開業の成功につながり、地域の薬局として息の長い経営ができるでしょう。

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