独立成功事例 SUCCESS
勤務薬剤師から独立開業を叶えられて
2019年12月 大久保薬局を事業承継にて開局
株式会社いろは(大久保薬局)代表取締役/管理薬剤師 甘粕 城治さん
独立開局を志したきっかけを教えてください。
私の父は建築関係の仕事をしていて、物心がついたときには独立していました。そんな父の影響を少なからず受けたこともあり、何かしらの形で独立したいと漠然と思い始めたのは大学生のときでした。
ですが、大学卒業後は無難にドラッグストアに入社、その後転職し調剤薬局に勤め「ずっとこれでいいのか?」というモヤモヤとした気持ちを持ちながら働いていました。薬剤師としての勤務経験の中で身に着けたスキルや学んだことを活かさないのはもったいないという気持ちもあったので、ならば薬局を開局して独立しようと考えるようになりました。
当時、エリアマネージャーとして勤務されていたということですが、責任ある立場を手放すのは惜しいと思いませんでしたか?
そのまま働き続けてもいいかなと考えていた時期もありましたが、正直なところ、職務を全うしていくうちにマネージャーとしての業務をやり尽した感じがありました。転職という選択肢もありましたがすでに一度転職を経験していますし、また転職して別の環境で勤務薬剤師として働くのもしっくりせず、それなら腹をくくって独立して、違うステージに立ちたいなという気持ちになりました。
独立に際し、当社サービスを選んだ経緯を教えていただけますか?
独立しようと決めてから、最初は手当たり次第に仲介会社に登録していました。登録しないと具体的にどんな薬局が売りに出されているか分からないので。10社ほど登録していましたが、3~4社くらいしか返事が返ってこなかった記憶があります。返事があっても、条件に沿った案件がないとの答えが多く、そもそもの案件数が少ない中で紹介してもらうに至るまでが競争なのかと感じました。
はじめは開局エリアに対してのこだわりはなかったのですが、家庭を持っていることや開局した地で経営していくことを考えると居住地近くの方が便利かと思い、横浜で探していました。人気エリアのためなかなか見つかるとは思っていなかったので、ユニヴからこのお話を頂いたときは即答でした。
率直に、独立して良かったと感じることを教えてください。
自身で薬局運営をコントロールできることでしょうか。最初はいろいろと大変でしたが、法や規約を理解して運営すればある程度自由も利きます。早く帰りたかったら帰ることもできますし、稼ぎたいと思うなら一生懸命働けば自分自身に返ってくるので、やりがいも感じます。
ただ、数字面に関しては自分の働き具合がダイレクトに反映されてしまうので、雇われていた頃とは必死度合いが違ってきますね。
店内にOTCを置いてらっしゃいますが、売れ行きはいかがでしょうか?
コロナ直後は好調でした。しかし、段々と落ち着いてしまったので昨年の9月頃からOTCのネット販売も始めました。処方せん受付だけではコロナ禍で収益を確保することが厳しいと思ったことと、最初は店頭でのみ販売していましたが、デッドストックにならないようネット販売と店頭販売の両方で在庫を管理していこうと考えたのがきっかけでした。
ネットで売り上がっていくと在庫も増えるため店頭商品も充実しますし、結果在庫の管理もしやすくなり両方で売り上げが上がりました。最初はネット販売をすることで在庫を沢山抱えることに不安がありましたし、全然売れなかった時期もありました。ですがコロナ禍で、価格が高騰していてもマスクが飛ぶように売れたことを経験したことで、売れ筋商品は極端に売れることが分かり、だんだんと販売のコツも掴んできたので、今となっては始めてよかったと思います。周辺のドラッグストアなどを観察することで世の中の動向をチェックすることもできますし、視野が広がりました。自店の売上と売れ行きが他店ともリンクしていて、なるほどと納得しましたね。マスクの次は何がくるかなと、違う業者みたいになってしまっています(笑)
ネット販売を始めたばかりの頃は手探りで、周りに意見を聞ける人もいませんでしたがYouTubeなどにあがっている動画を見てノウハウや情報を集めました。
薬局のHPを拝見しましたが、内容も充実していますし、LINEでの処方せん受付など情報配信ツールをしっかり活用されているなと思いました。
実はプログラミングの勉強を学生時代に齧っていたので、HPは自作で作りました。今ではオープンソースや作成ソフトなど、ネットで調べたらいくらでも出てきます。デザインに関しては専門外なので難しいですね(笑) セキュリティ対策に関しては専門家ではないので、個人情報などをアップしないよう心掛けています。
LINEの活用に関しては、今一番使われているアプリですし、処方せん受付専門のアプリより普及しているものを使う方が、万が一セキュリティ面で問題が見つかったとしてもすぐに対策されやすいと思います。気軽にお薬の相談や処方せんを送ってくれる方も結構いらっしゃいますし、緊急事態宣言時に世間が予防対策を意識しだしたときは、薬局内で密にならないように患者さんに先にLINEで処方せんを送ってもらい、受け取るまでは外でお待ちいただくこともありました。
まだまだ長引いているコロナですが、影響の具合はいかがですか?
調剤の売り上げに関しては、小児科門前ということもあり事業計画書の試算の3分の2ほどになってしまいました。物販で何とかカバーしましたが、本来であれば調剤で賄えることが一番です。処方せんは1枚当たり少なく見積もっても1,000円程度の粗利が見込めますが、物販は1つあたり100~200円なので。
あとは仕方ないことではありますが、コロナの陽性者の発表やメディアの発表のタイミングに合わせるかのように、来店される患者数も影響を受けていますね。
開業資金の調達やお金などの管理業務はとても大変だと思うのですが、実際いかがですか?
しばらく無給で生活できるくらいの貯金はしていましたし、融資も予定通り審査が通り安心しました。
ただ、貯金ももちろん大事ですが、例えば家賃や住宅ローンなど生活の固定費を調整することも大事ではないかと思います。貯金がいくら多くても固定費が高く貯金を切り崩してしまうことがあると、精神衛生上良くないと思います。
資産家の方は話が違ってしまいますが、私のように一から始めるのであれば 貯金をしたうえで更に融資を受けて資金に余裕を持つと、安心して独立できると思います。
また、保険手続きや会計などの基本業務は勉強して自分で行っていますが、それ以外の専門的な知識に関しては税理士に助けてもらっています。税理士もあくまで業務の指導・監督を行うという中立的な立場なので、業務を丸投げせずに自身でスキームを検討したうえで「これで大丈夫か?」「法に抵触していないか?」という感じで尋ねるスタンスでいた方が上手くお付き合いできるかと思います。
スタッフや自身の勤務管理に関してはいかがでしょうか?
開局間もない頃は事務スタッフの募集になかなか応募がなく苦労しました。その後店頭に出した募集の張り紙をしたり、ハローワークなどの無料求人も複数活用したりしました。立地に恵まれていたことと、コロナ禍で求人も少なかったのか募集も増え、おかげさまで今ではパート事務員2人に曜日交代体制で入ってもらっています。
1人で週5日のフル勤務体制も考えましたが、万が一のときに代わりがいませんし、雇うにしても扶養範囲内の方を複数名採用することで、お互いの都合や希望を考慮でき勤務しやすい環境になるかと思います。事務員も薬剤師も、会社に協力してくれる方がいるだけで会社の経営状況も違ってくるなと独立してひしひしと感じています。
経営するうえで大切だと思われることを教えてください。
実際に独立してみて、柔軟性を持つことが本当に大事だと感じています。もともと昔から”こんなふうになりたい”といった理想にあまり拘り過ぎない方がいいと思っています。仕事のやり方もその拘りに合わせてしまうため、変化に柔軟に対応しにくくなるのではないでしょうか。ですので、時と場合に応じて一点集中する形で仕事をした方が、上手くいくのではないかと……少なくとも大失敗には至らないのかなと個人的に思います。
また必要だと感じたことは、簿記3級程度の勉強をしておくことです。決算書を読むなど、簿記や会計業務に関わる機会がなかった方が独立することも多いと思いますので、数字や用語を最低限押さえて、経営状況の良し悪しを見極める力も着けておくといいかと思います。少なくとも私は役に立ちました。独立後に必要な知識は勤務薬剤師として学ぶ知識とは違う部分もありますが、やはり人間は実際に走りながら学んだほうが吸収しやすいと思います。
最後に、これから独立する方へメッセージをお願いします。
独立したいのであれば早いうちに動くことをお勧めします。もちろん最低限の経験も必要になりますし、投資することに不安はあると思いますが、それ以上に時間には代え難いと思います。
私が仲介会社を使って独立先の店舗を探した理由は、自身で探したら何年かかるか分からないですし、経営者には声がかかりやすいと思いますが、勤務薬剤師に店舗を任せたいという話はなかなかないと思ったからです。
なので、お支払いしている仲介手数料も自身の開局の初期投資の計算に組み込んでしまって、独立までに2年も3年も時間がかかるようであれば、 多少投資額が高くてもその分早く独立してしまった方が採算が合う場合もあります。独立を躊躇している人がいらっしゃれば、そのように考えてみたら踏み出しやすいのではないでしょうか。
独立して経営することは難しいことも多いので慎重になった方がいいかもしれませんが、慎重になり過ぎたら行動は起こせません。後悔しないように人生を歩んで行っていただけたらと思います。
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株式会社いろは(大久保薬局) 代表取締役/管理薬剤師 甘粕 城治さん
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