薬局はボランタリーチェーンに加盟すべき？メリット・デメリットを紹介

調剤薬局を経営する中で「仕入れコストが重い」「薬剤師の教育支援が不十分」「大手チェーンと比べて集客力に不安がある」と悩む場面もあるでしょう。特に個人運営の薬局では価格交渉力や販促力に限界があり、競合との差をどう埋めるかが重要な経営課題です。そこで選択肢の1つになるのが、独立性を保ちながら協力体制を築ける「ボランタリーチェーン」です。

当記事では、ボランタリーチェーン薬局とは何か、フランチャイズとの違い、加盟によるメリット・デメリット、加盟までの流れを整理して解説します。読み進めることで、自店の経営にマッチする選択肢かどうかを判断する材料を得られるでしょう。

ボランタリーチェーンとは、独立した小売店や事業者が同じ目的のもとで結集し、協力関係を築くことで経営効率を高める仕組みです。大型資本に対抗しながらも、各店舗の独自性や経営方針を維持できる点が特徴です。

加盟店同士は横のつながりが強く、仕入れ情報やサービス提供ノウハウを共有することで、仕入れコストの削減や販促活動の効率化、経営力の底上げにつなげられます。

ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンは、どちらも複数の店舗が連携する経営形態ですが、その成り立ちと関係性は異なります。ボランタリーチェーンは、独立した事業者が自発的に組織化し、仕入れや販促などを協力して行う形態です。本部は加盟店による組合的な性質を持ち、加盟店同士には横のつながりがあります。各店舗は経営方針の自由度を維持したまま、共同仕入れや相互の情報共有による効率化の恩恵を受けられる点が特徴です。

一方、フランチャイズチェーンは企業が本部となり、ブランド・ノウハウ・運営マニュアルを提供し、加盟店はその対価として加盟金やロイヤリティを支払う仕組みです。各加盟店は本部と1対1で契約し、その経営支援のもとで店舗を運営するため、自由度は低いものの知名度や実績を活用できるというメリットがあります。このように、主体の違いと本部との関係性、加盟店同士のつながりの有無が、両者の大きな相違点と言えるでしょう。

ボランタリーチェーンに加盟することで、薬局は独立性を保ちながらも他店と連携し、流通や販促を効率化できます。ここでは、ボランタリーチェーン加盟による主なメリットを解説します。

ボランタリーチェーンでは、加盟店が個別に仕入れるのではなく、本部が発注内容を集約して大口発注・共同購入するため、医薬品卸との価格交渉力が高まって仕入れ価格を削減できる可能性があります。個人薬局が大量仕入れを行うと在庫リスクや期限切れの廃棄リスクが伴いますが、チェーン全体で数量を確保できれば、スケールメリットを生かしつつ無駄の少ない供給が実現します。

また、価格交渉や管理を本部が担当することで、各店舗の仕入れにかかる手間や人的コストも軽減できる点は薬局経営の効率化にも有用です。

ボランタリーチェーンは、加盟店主体で構成されるため、フランチャイズに比べて店舗経営の自由度は高くなります。フランチャイズでは、本部ブランドを使える代わりに、取扱商品・店舗デザイン・販促施策などに厳格なルールがあり、経営裁量が制限されるケースが一般的です。

一方でボランタリーチェーンでは、本部のサポートを受けつつも、地域や店舗の特性に応じて商品構成や運営方針などを柔軟に決定できます。そのため、店づくりの独立性を保ちながら協力体制を活用したい薬局に適した仕組みと言えるでしょう。

ボランタリーチェーンは加盟店が主体で運営されるため、地域の事情や状況に合わせた独自サービスを展開しやすい仕組みです。チェーン内で地域の需要情報を共有できるため、自店で把握できないニーズも取り込みやすく、地域住民に寄り添った商品選定や健康相談などのサービスを柔軟に展開できます。

また、地元の病院やクリニックなどの医療機関、介護施設、自治体の健康イベントなどと連携しやすく、医療圏単位での支援体制を築きやすい点も特徴です。大手一律型では拾いきれない顧客の細かな生活ニーズに応える運営ができる点は、個人経営薬局にとって魅力となるでしょう。

ボランタリーチェーンには加盟店同士の横のつながりがあり、需要動向や売れ筋商品、成功事例などのノウハウを共有することが可能です。他店のPOSデータや販促施策の結果などを参考にすることで、自店だけでは得られないデータに基づいた戦略を立てられます。

また、本部に集約された実績データから店舗規模や立地に応じた改善提案を受けられる場合もあり、個人薬局だけでは難しい分析・検討を補完できます。このナレッジにより、全体の底上げと継続的な成長が期待できるでしょう。

ボランタリーチェーンには多くの利点がある一方で、加盟には費用負担やブランド力の弱さなどのデメリットも存在します。ここでは、薬局が加盟する際に考慮すべき主なデメリットを解説します。

ボランタリーチェーンに加盟する場合、入会金や月々の会費といった費用負担が発生します。仕入れコストの削減や情報共有などのメリットはあるものの、その恩恵が会費を上回るかどうかはボランタリーチェーンの運営実態や店舗規模によって左右されます。

また、会費の料金体系は月額制や売上連動型など、ボランタリーチェーンによって異なります。そのため、費用対効果を慎重に見極めた上で加盟判断を行うとよいでしょう。

ボランタリーチェーンは独立した事業者の集合体であり、統一ブランドとして展開されるフランチャイズとは異なります。そのため、加盟しただけでは知名度向上につながりにくく、自店の集客は広告施策や口コミ形成など、自らの努力で積み上げていく必要があります。

フランチャイズのように既存ブランドの信頼やネームバリューを活用して初期集客を得ることは難しく、地域での認知形成には時間と労力が求められます。利用者の来店動機を生み出すには、薬剤師の接客品質や専門性など、薬局の付加価値を磨く努力も必要です。

ここでは、ボランタリーチェーンに加盟する際の一般的な流れを説明します。なお、ボランタリーチェーンによって細かな手順は異なるため、事前に公式サイトや担当者へ確認しておきましょう。

ボランタリーチェーンにより所要期間は異なりますが、申込から加盟完了までは1～2か月程度が目安とされています。

ボランタリーチェーンは、独立性を保ちながら仕入れ・販促・情報面での協力体制を築ける仕組みであり、個人薬局でも大手に対抗しつつ効率的な経営を実現できる点が強みです。一方で、入会金や会費といった費用負担が生じることや、フランチャイズほどの知名度の支援は得にくい点は留意すべきポイントです。

加盟の向き・不向きは、取引価格の削減や情報共有などのメリットが、費用負担やブランド支援の弱さを上回るかどうかで判断できます。「独立性を維持しながら経営の底上げを図りたい」「地域密着を強みにしつつ体制を強化したい」という場合は、まずは複数のボランタリーチェーンに資料請求・相談を行い、費用対効果や支援内容を比較検討するとよいでしょう。